役員報酬をなしにするメリットデメリット!税金や社会保険料への影響は?(開業税理士が執筆)

役員報酬無し
社長の役員報酬なしは会社を経営するうえで正解?
  • 社長の役員報酬を無しにすることのメリットは?
  • 役員報酬を無しにすると会社としては得?損?
  • 節税したいなら役員報酬はもらうべき?

「金融機関から融資を受けるために会社を黒字にしたい」

そのような思いから、「とりあえず役員報酬を0円にしよう」と考える経営者もいるかもしれません。

たしかに、役員報酬を無しにすることで会社に資金が残り、決算書上は利益を増やすことができるでしょう。

ただし、役員報酬を0円にすることで、税金の負担が大きくなったり、社会的な信用を得られなくなったりするリスクもあります。

経営戦略として役員報酬を無しにすることを検討しているのであれば、こうした側面についても知っておきましょう。

この記事では、社長の役員報酬を無しにするメリット、デメリットについて解説します。

経営者として自身の報酬をどうするべきか悩む方は、目を通してみてください。

【この記事を書いた人】文章を書くのが三度の飯より好きな40代前半の税理士ライターです。会計や税務について様々なメディアに寄稿しています。上場企業経理として10年勤務(税理士資格取得)後、税理士・執筆業として独立開業しました。税理士としては常時15社の顧客企業の税務を担当しています。

社長の役員報酬を無しにするメリットはある?

役員報酬無し
役員報酬を0円にするメリットは?

社長の役員報酬を無しにすることで得られるメリットは、次の3つです。

  • 会社の黒字を確保できる
  • 社会保険料などの課税負担を小さくできる
  • 会社としての評価が高くなる

まず、社長への役員報酬がなくなることで、会社としては利益を残せることになります。

設立したばかりで資金の少ない会社にとって、役員報酬0円は会社の黒字を確保するひとつの手段です。

また、役員報酬は給与所得扱いとなるため、役員報酬を無しとすることで個人の所得税や住民税、

社会保険料などの負担を小さくすることができます。

さらに、社長自ら役員報酬を無しにすることで、会社の経営を第一に考える姿勢を株主に示し、

周囲からの評価をよくするというメリットもあります。

>>自営業者は、いつのタイミングで税理士に相談すべき?

社長の役員報酬無しはメリットばかりではない

役員報酬無し
社長の役員報酬を無しにするデメリットは?

社長の役員報酬を無しとすることで前述したようなメリットがありますが、

必ずしも会社にとって有益なことばかりではありません。

役員報酬を0円とすることは、手放しでおすすめできる方法ではない理由を解説していきます。

金融機関からの心証がよくない

社長の役員報酬を無しとすることは、金融機関からの心証がよくないことがあります。

金融機関は損益の内容を分析する

役員報酬を支払っていないから黒字になっていたとしても、金融機関は当然気づいています。

それを踏まえて企業を評価しますので、利益を出すためだけの役員報酬0円はあまり意味がありません。

他からの収入があることを証明できないと、金融機関からの心証は悪くなってしまうでしょう。

また、役員報酬を無しにしていると、信用調査会社からもよい評価を持たれないため、

取引先からの印象が悪くなるというリスクもあります。

役員貸付金は金融機関のイメージが最悪

「報酬をもらわなくても会社から借金すれば赤字にはならない」と考えていませんか?

これは絶対にやめた方がいいでしょう。

金融機関は運転資金や設備投資にはお金を貸してくれますが、個人の生活費や娯楽にはお金を貸してくれません。

会社から役員への貸付金が発生していると、貸し付けたお金が目的以外に利用されているのかと疑われてしまいます。

最悪の場合、新たな借り入れが難しくなってしまう可能性もあるのです。

最低限必要なお金は役員報酬として支払っておいた方が結果的には無難です。

法人税が高くなる

役員報酬が0円なら課税負担が小さくなるというメリットについて述べましたが、

一方で法人税が高くなるというデメリットがあります。

役員報酬がなければ、会社としての利益が増えることになります。

結果的に会社が黒字となれば、法人税が発生してしまうのです。

社長個人の所得税を抑えられたからといって、その分得になるとは限りません。

所得税と法人税はどちらが高い?

所得税は給与の総額ではなく、総額から社会保険料や給与所得控除などを差し引いた所得によって税率が異なります。

月額の総支給額38万円、年収456万円を例として考えてみましょう。

総支給額(年収456万円)に対して発生する費用は、

  • 社会保険料 約65万円
  • 所得税 約11万円
  • 住民税 約20万円

となります。

対して法人税の税率は以下のとおりです。

  • 800万円以下 15%(約68万円)
  • 800万円超 23.2%(約106万)

上記のとおり個人と法人の税率には差があります。

役員報酬を0円とし、個人の税金負担がなくなったからといって、

利益が出ればそれ以上の税金を法人税として支払う可能性もあります。

バランスを考え役員報酬の金額を決めることが重要です。

役員報酬無しとしても所得税を納めなければならないケース

役員報酬を無しとしても、所得税を納めることになるケースもあります。

たとえば、

  • 自宅の水道光熱費を会社で支払っている
  • 食費を会社の経費として計上している

など、個人が利用する経費を会社の負担にしていませんか?

これらの費用は会社の経費にはなりません。

税務署に見つかると社長への報酬として指摘され、所得税を納めることになります。

法人税が高くなることに加え、所得税も引かれてしまうので、役員報酬を0円にするメリットがなくなってしまいます。

国民健康保険や国民年金への加入が必要となる

社長の役員報酬を無しとすると、社会保険料の負担はなくなりますが、

代わりに国民健康保険や国民年金に加入し、保険料を支払わなければなりません。

社会保険料は報酬額に対して健康保険(約10%)、厚生年金(約18%)となっており、

これを役員本人と会社が折半することになります。

役員報酬が0円なら、そもそも社会保険に加入することはできず、社会保険料は発生しません。

では、社会保険料の負担がなくなった分得だと考えていいのでしょうか?

答えは「NO」です。

まず、日本人は健康保険と年金に加入する必要があり、報酬がない場合は、国民健康保険に加入するか、親族の扶養としてもらう必要があります。

なお、年金については、配偶者の扶養に入れば免除されますが、配偶者以外の扶養となっている場合、国民年金は自ら納めなければなりません。

このように、報酬がなくなったからといって、単純に費用が抑えられるわけではないのです。

支払う社会保険料には上限がある

年収が増えたからといって、社会保険料が増え続けることはありません。

所得税や住民税とちがって社会保険料には上限があります

健康保険および介護保険は月額1,355,000円が上限、厚生年金保険は月額635,000円が上限とされており、

月の給料がこの額を超えれば、引かれる保険料は変わりません。

また、賞与の上限は、健康保険で573万円、厚生年金保険で150万円とされています。

つまり、上限を超えて高収入になるほど、得になるのです。

場合によっては、社会保険料の負担より、国民健康保険や国民年金の負担のほうが高くつくケースもあります。

>>自営業者は、いつのタイミングで税理士に相談すべき?

役員報酬の額は慎重に決めるべき

役員報酬無し
役員報酬額を決める際は慎重に
役員報酬は定期同額給与といって、1年間同じ金額を支払い続けなければなりません。

途中で増やしたり減らしたりすることは認められていないのです。

そのため、役員報酬の額は慎重に決めることが求められます。

利益を出すために役員報酬を0円にして、結果的に大幅な黒字になってしまったら、その分、法人税を納付することになります。

反対に、利益が出ることを期待して役員報酬を増やしすぎて、結果的に赤字になってしまったら、金融機関の評価が悪くなってしまうことでしょう。

事業が軌道に乗るまで利益を正確に読むことは非常に困難です。

生活に最低限いくら必要なのかを考えて役員報酬とすることをオススメします。

自営業者は、いつのタイミングで税理士に相談すべき?

 

このブログ記事を読んでいただいている方の多くは、

「なんらかの理由で、会計や税金の計算をなんとかしないといけない」

という状況の方が多いかと思います。

  • まずは自力でなんとかしよう…
  • とりあえず、今年は自分で確定申告やをってみよう。
  • 税理士さんに任せるとかはまだ早い気がするし…

↑こんなふうに考えながら、

コツコツ作業されている方も多いかもしれませんね。

ただ、今後もずっと事業や副業を続けていかれる予定の方であれば、

少しでも早く税理士に税金計算を依頼した方が良いですよ。

なぜかというと、事業を始めてからだいたい3年以内のタイミングで、

税務署から税務調査がやってくる可能性が高いからです。

(特に「利益が出ている新しい企業」は集中的に狙われます)

注意してほしいのは、

税務調査って「過去の年度にさかのぼってチェックしてくる」ことです。

事業や副業を始めて1年目〜3年目って、

事業者側も会計に慣れていなくて、

計算まちがいが生じていることって多いんですよね。

税務署は、私たち事業者側のそういう「弱いところ」をついてきます。

もし税務調査が入って計算のまちがいを指摘されると、

延滞税や加算税などばく大な金額のペナルティが課せられる可能性があります。

こういったリスクを避けるためにも、

「事業や副業を始めた最初の年度」から、

税理士に確定申告を依頼しておいた方が良いんです。

>>税理士費用の相場がいくらぐらいか?を知りたい人へ

うちには税理士なんてまだ早い…(←これ、危険すぎです)

(自力で税金計算!…は実は「超危険」です)

うちみたいな小さな規模のところには、

税理士なんてまだまだ早い…

↑ここまで読まれて、こんなふうに感じたかもしれません。

私も自営業長いことやってますので気持ちはわかります。

「税理士に依頼」とか、なんとなくハードルが高いですよね。

ですが、小さい規模の事業者ほど、

事業スタートした最初の年」から税理士に見てもらう方が良いのはまちがいないです。

(すでに経験豊富な経理スタッフを従業員として雇っているとかなら別ですが)

なぜかというと、

あまり知識がない状態で、自力で税金計算するのってあまりにもリスクがでかすぎるんですね。

税金の計算をいい加減にやってしまうと、下手すると会社がつぶれます。

(これは誇張ではなく、リアルな話です)

実際、私は過去に300名以上の自営業者さんや

副業サラリーマンの方たちとやりとりをしてきていますが、

事業を始めてまもないころに、

勘違いしてやってしまった会計処理のミスが原因で、

数十万円〜100万円以上の追徴課税(延滞税や加算税のこと)

を課せられてしまった人たちをたくさんみてきました。

税金は期限までに「現金で」払わないといけないのにも要注意です。

利益が出ていても、入金がかなり先で税金の納付期限にまにあわない…ってあるあるですからね。

ほんのわずかな税理士に支払うコストを節約したのが原因で、

何年後かにいきなり税務調査がきて、

ウン十万円、ときにはウン百万円もの追徴課税をとられる…。

なんて、馬鹿馬鹿しすぎますよね。

(最近はYouTuberとかでもそういう人増えてるみたいですが)

すでに事業や副業をスタートしている人なら、

少しでも早いタイミングで税理士に依頼しておく方が絶対に良いですよ。

>>自社の近所で「最安値の税理士事務所」を知る方法

「100万円以上も税金が安くなった…!」なんてケースもあります

(節税対策や補助金活用で100万円以上のお金が返ってくることもあります)

 

税理士は、自営業者や副業の人向けの節税対策や、

使える補助金などの活用方法を教えてくれます。

利益がかなり出ている年に適切な節税対策ができれば、

「100万円以上も税金が安くなった…!」

なんてことも普通にありますよ。

創業後1〜3年以内の自営業者だけが使える補助金とかもありますからね。

(※ 補助金=申請すれば政府からタダでもらえるお金のこと。これは期間限定なことが多いので、絶対に検討しておいた方が良いです)

節税対策や補助金を上手に活用できれば、

税理士に支払うコストぐらいは普通にペイできてしまったりします。

あと、経理のレシート整理とかってめちゃくちゃめんどくさいですよね…。

税理士に依頼すれば、こういう作業は全部変わりにやってもらえるのも大きいです。

毎日コツコツ領収書整理して、自力で確定申告…なんて早めに卒業しましょう。

これって経営者がやるべき仕事じゃないですから。

こういう「めんどうな割に1円も生み出さない作業」は税理士に丸投げして、

私たち事業者は売上を少しでも増やすことに集中しましょう。

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