
- 個人事業主から法人化したら、社長の社会保険料の負担はどうなる?
- 半分は会社負担になるってどういう意味?
- 結局お金は毎月どれだけ出ていくの?保険料の計算方法は?
個人事業主から法人化すると「社会保険料は会社と個人が半分ずつ負担するかたちに変わる」という話を聞いたことがある方も多いと思います。
↑これ、はっきりいって「?」な感じがしますよね。
日本の社会保険の仕組みは「世界で一番ややこしい」といわれるぐらい複雑にできているので、慣れない方は理解しにくいのが普通です。
ただ、社会保険料は毎月支払うものなので、損はしたくないですよね。
せっかく事業を法人化するなら、損をしないように社会保険の仕組みをきちんと理解しておきましょう。
この記事では「個人事業主が法人化した場合、社会保険料の負担がどのように変化するのか?」を簡単にわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてみてくださいね。

税理士事務所で11年間働いた後、一般企業の経理に転職してグループ会社3社の経理管理職をやっています(社長の確定申告などプライベートなことまでこっそりやってたりします)会計税務の他にも助成金活用や社会保険関連のリスク管理業務も得意。経営者むけの節税対策専門ライターとしても活動しています。
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「社会保険料の会社負担は半分」の意味とは?

まず「社会保険料の会社負担分は半分」←これの意味について説明しましょう。
例えば、毎月支払う社会保険料が10万円だったとしたら、5万円だけが会社の経費として処理できると言うことですね。
経費が増えればその分だけ利益が減り、税金も安くなると言うわけです。
個人事業主は社会保険料を経費として処理することはできませんから、事業を法人化することのメリットの1つということができます。
会社負担が半分になる「社会保険料」はこの3つだけ
ただし、半額負担となるのは「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険」の3つです。
そもそも社会保険とは、
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 労災保険
- 雇用保険
の5つをまとめた総称です。
このうち健康保険、厚生年金保険、介護保険については、労使折半といって会社と社員とが半額ずつ負担することになっていますよ。
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法人化した後の社会保険料の計算方法

まずは標準報酬月額と等級を知ること
社会保険料を確認するには、まず自分の標準報酬月額と等級とを知る必要があります。
健康保険は50等級、厚生年金保険は32等級に分かれていて、給与額によって区分されます。
この等級によって保険料の負担額が変わるので、とても大切な情報なんです!
「保険料額表」をチェックしよう
加入している健康保険組合もしくは協会けんぽホームページや、日本年金機構ホームページで、「標準報酬月額表(保険料額表)」をチェックしてみましょう。
自分の給与額のところを見ると、標準報酬月額と等級が書かれているはずですよ。
たとえば、給与が290,000円~310,000円の人は、
・標準報酬月額→30万円
・健康保険→22等級
・厚生年金保険→19等級
ということが分かりますよね。
「折半額」で負担額が分かる
同じ行に、「全額」「折半額」という欄があります。
「全額」は会社負担分と本人負担分を合わせた額で、「折半額」は本人が負担する額のことです。
40歳から64歳の人は、健康保険では「介護保険第2号被保険者」に該当するので、この欄を見ましょう。
これで社会保険料の負担額が確認できました。
社会保険料の計算方法

では、その社会保険料はどうやって計算されているのでしょうか?
社会保険料の折半額は、それぞれ「標準報酬月額×保険料率÷2」で計算できます。
保険料率を踏まえ、どう計算されているのかを具体的に試してみましょう。
ここでは、先ほどのように標準報酬月額が30万円の場合で計算していきますね。
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健康保険料の計算方法
健康保険率は加入している組合によって違いがあったり、協会けんぽなら都道府県別でも違いがありますが、
令和5年の健康保険料率はだいたい10.00%なので、それで計算してみると、
30万円×10.00%÷2=15,000円
が、標準報酬月額30万円の人の折半額となりました。
病気やケガをしたときに保険証があれば医療給付を受けることができるのも、健康保険のおかげですね!
厚生年金保険料の計算方法
厚生年金保険料率は全国一律で、平成29年以降、引き上げはされていません。
令和5年も18.30%となっています。
30万円×18.30%÷2=27,450円
が、標準報酬月額30万円の人の折半額です。
多いなと感じるかもしれませんが、それは厚生年金保険に加入すると同時に国民年金保険にも加入しているからなんです。
国民年金だけよりも老後の年金受給額を増やすことができますし、
ケガや病気が原因で障害が残ってしまったときなども年金給付を受けることができるんですよ。
介護保険料の計算方法
介護保険料は全員から徴収されるものではなく、徴収対象者は40歳〜64歳までの人です。
保険料率は全国一律で決められていて、令和5年は1.82%なので、
30万円×1.82%÷2=2,730円
という計算になりました。
これを納めておくことで、支援や介護が必要な状態になったときに、
グループホームを利用したり、ヘルパーさんが来てくれたりと介護サービスを受けることができますよ。
社会保険料が免除されるケース

産前産後休業期間中
会社員本人が産前42日分(6週間)と産後56日分(8週間)を休業したとき、その期間を「産前産後休業期間」といいます。
年金事務所または管掌組合へ申し出を行えば、会社負担分と従業員負担分の両方が免除になりますよ。
保険料は納めたことになり、将来受給する年金額が減ることはないので、ぜひ申請しましょう!
休業を開始した月から休業終了予定日の属する月の前月までの間に申請しなくてはいけないので、注意してくださいね。
育児休業等期間中
会社員本人が満3歳未満の子を養育するための「育児休業等期間」を取得したときも免除になります。
こちらは、休業を開始した月から休業終了日の翌日が属する月の前月までの間に、
年金事務所または管掌組合へ申し出を行ってください。
産前産後休業期間中と同じく、会社負担分と従業員負担分の両方が免除されますし、
こちらの制度も利用することによって、将来受給する年金額が減ることはありません。
「扶養家族」の健康保険料・厚生年金保険料
専業主婦や子どもなど、会社員の家族で生計を一にしている人の収入が一定額未満のときは、扶養に入れることができます。
このとき、追加の保険料はかかりません。
さらに、会社員の配偶者が20歳以上60歳未満の扶養家族なら、「第3号被保険者」という扱いになり、
配偶者本人の保険料負担がなくても、納付したものとして将来受給する年金額に反映されます。
従業員が2か所の社会保険に加入しているケースはどうなる?

会社員の場合、健康保険と厚生年金保険を2か所の会社で加入することができます。
しかし、保険証を2枚持つことはできませんよね。
従業員本人がどちらの会社をメインとするか決めて、年金事務所へ
「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を提出しましょう。
標準報酬月額と等級は、すべての会社の給与額を合算した額を保険料額表で確認すればが分かります。
保険料はそれぞれの会社が払っている給与額の割合で按分しますが、
難しい按分計算は年金事務所がしてくれるので、
事務所から送られてくる書類の通りに天引き・納付の事務を行えば大丈夫です!
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従業員を支える社会保険の仕組み

社会保険料はばかにならないと感じるかもしれませんが、いざというときに助けられるものでもあります。
たとえば傷病手当金や出産手当金なども大きいですよね。
社会保険料のうち、「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険」の3つは会社が半分負担してくれますので、
将来や困ったときに備えておきましょう!
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