給与支払報告書を提出しないと罰則?従業員の年末調整をするときの注意点を紹介(開業税理士が執筆)

給与支払報告書 提出しない
(給与支払報告書を提出しないとどうなるの?)

 

  • 給与支払報告書を役所に提出しない罰則がある?
  • パートさんから「できれば提出しないで下さい」と頼まれたけどどうすべき?
  • 提出しない場合、会社や従業員にどんなリスクがあるの?

従業員を雇っている事業者の方にとって、

毎年年末調整の時期になると頭の痛い問題ですよね。

だんなさんの扶養の範囲内で働きたいパートさんなどを雇っている場合、

「できれば役所に給与支払報告書は出さないでください…」とお願いされるケースも多いかと思います。

この記事では給与支払報告書を提出する/しないのルールや、提出をしない場合にどのようなリスクがあるのか?について説明します。

ぜひ参考にしてみてください。

【この記事を書いた人】文章を書くのが三度の飯より好きな40代前半の税理士ライターです。会計や税務について様々なメディアに寄稿しています。上場企業経理として10年勤務(税理士資格取得)後、税理士・執筆業として独立開業しました。税理士としては常時15社の顧客企業の税務を担当しています。

給与支払報告書の提出をしないと罰則があるの?

給与支払報告書 提出しない
(給与支払報告書を提出しないと罰則があるの?)

給与支払報告書とは、従業員の住民税を市町村が計算するために必要な書類です。

事業者は雇用形態にかかわらず、全ての従業員の給与支払報告書を用意しなければなりません。

もし、給与支払報告書の提出義務があるのにしなかった場合、以下のような刑事罰を受ける可能性があります。

1年以下の懲役または50万円以下の罰金

↓根拠となる法律の条文としてはこちらです。

市区町村への給与支払報告書の提出が義務付けられているにも関わらず、提出しなかった場合や虚偽の報告をした場合は、地方税法第317条の7の規定により1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

〜提出すべき給与支払報告書、届出書若しくは公的年金等支払報告書を提出しなかつた者又は虚偽の記載をした給与支払報告書、届出書若しくは公的年金等支払報告書を提出した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用元:地方税法 第317条の7(給与支払報告書等の提出義務違反に関する罪)

実際にはこうした刑事罰が課されるケースはまれです。

ただ、税務調査などによって給与支払報告書の提出漏れが発覚した場合、従業員が負担すべき住民税等を事業者側が負担させられてしまうようなケースが考えられます。

(実際にはこちらの方が痛いです)

給与支払報告書を提出しない場合、このような厳しいペナルティがあるんですね。

>>自営業者は、いつのタイミングで税理士に相談すべき?

給与支払報告書について4つの疑問

給与支払報告書 提出しない
(給与支払報告書の疑問4つ)

↓給与支払報告書についてよくある疑問として、以下の4つが考えられます。

  • 給与支払報告書の提出義務があるのって具体的にどういう事業者?
  • 給与支払報告書の提出義務がない「30万以下の特例」とは?
  • 給与支払報告書を提出していないのが役所にバレるってどんなケース?
  • 給与支払報告書の提出期限は?

それぞれの項目について、順番にみていきましょう。

1. 給与支払報告書の提出義務があるのって具体的にどういう事業者?

給与支払報告書の提出義務がある従業員は正社員だけでなく、アルバイト・パート・役員も含まれます。

給与支払報告書の提出義務がある場合の例を、4つ記載したので参考にしてください。

  • 在職中のアルバイト(前年の年収30万超)
    原則通り提出義務がある
  • 在職中の正社員(前年の年収30万超)
    原則通り提出義務がある
  • 前年退職したアルバイト(前年の年収30万以下)
    免除の特例があるが、可能な限り提出
  • 前年退職した正社員(前年の年収30万以下)
    免除の特例があるが、可能な限り提出

2. 給与支払報告書の提出義務がない「30万以下の特例」とは?

提出義務には特例があり、前年中に退職した人のうち支払額が30万以下の場合は提出の免除が認められています。

この特例は、入社後すぐに従業員が退職してしまったときなど、給与支払報告書の提出に必要な個人情報が不足している人を想定しています

あくまで特例による免除であり、全ての市区町村にあてはまるわけではありません。

「30万以下の給与で毎年退職を繰り返せば住民税・国民健康保険料がお得になるのかな?」

と考える人も出てきてしまうので、公平の観点から30万円以下の退職者についても提出するよう推奨されています。

もし、この特例に当てはまった場合は、事前に市区町村へ確認したうえで特例を利用するようにしましょう。

3. 給与支払報告書を提出していないのが役所にバレるってどんなケース?

市区町村の役所は、給与支払報告書が未提出であることを容易に判断できます。

従業員が個人で確定申告すると、市区町村に給与支払報告書に提出していないことがばれます。

副業をしている従業員は年末調整とは別に確定申告をしますよね。

従業員が税務署へ提出したマイナンバーや収入等の情報は、そのまま市区町村へ回送されます。

4. 給与支払報告書の提出期限は?

給与支払報告書は、前年中に支払った給与の情報を従業員が住んでいる市区町村へ翌年の1月31日までに提出します。

提出期限に遅れると、翌年6月の徴収開始に間に合わない可能性があります。

>>自営業者は、いつのタイミングで税理士に相談すべき?

給与支払報告書を提出しなかったときの従業員への影響

給与支払報告書 提出しない
(給与支払報告書を提出しないと起こる従業員への影響4つ)

事業主にとって、もっとも怖いことは大切な従業員の生活に不利益が生じてしまうことです。

給与支払報告書を提出しなかった場合のような影響が出るのか4つ解説していきます。

  • 脱税になる可能性がある
  • 社会保険の扶養に入れない
  • 認可保育園の利用料や、児童手当が計算されない
  • 国民健康保険料が計算されない

脱税になる可能性がある

従業員が自分の課税証明書や住民税決定通知書を見たときに、記載された収入金額が少ない

とわかると、事業主が給与支払報告書を提出しなかったことに気付くでしょう。

本来は住民税が課税される収入金額の場合、従業員が脱税をしたと判断される可能性があります。

社会保険の扶養に入れない

夫(家族)の社会保険の扶養に入る際に、前年の収入を確認する目的で「非課税証明書」を求められることがあります。

「非課税証明書」は、市区町村が収入の情報を把握していることが大前提です。

給与支払報告書を提出しないと、市区町村が収入の情報を把握できずに「非課税証明書」を発行できないので、社会保険の扶養に入れなくなってしまいます。

住民税の計算をした結果、課税・非課税を判定できるものなので、市区町村が収入の情報を把握していない「未申告」の状態とは違います。

認可保育園の利用料や、児童手当が計算されない

幼児教育・保育の無償化制度が始まりましたが、0歳〜2歳児の保育料については住民税の金額をもとに計算されます。

児童手当の計算方法は住民税の金額が重要です。

そのため、給与支払報告書を提出しないと、正確な住民税がわからず従業員とトラブルになってしまいます。

国民健康保険料が計算されない

国民健康保険料は、市区町村が従業員の収入の情報を把握して計算します。

そのため、給与支払報告書の提出をしないと、市役所が収入を把握できず従業員が国民健康保険料を正しく納められません。

また、国民健康保険の減額や免除の申請をする際には「非課税証明書」を求められます。

このときにも従業員の収入の情報を把握しておかなければならないので、申請が上手く受理されない可能性があることも覚えておきましょう。

自営業者は、いつのタイミングで税理士に相談すべき?

 

このブログ記事を読んでいただいている方の多くは、

「なんらかの理由で、会計や税金の計算をなんとかしないといけない」

という状況の方が多いかと思います。

  • まずは自力でなんとかしよう…
  • とりあえず、今年は自分で確定申告やをってみよう。
  • 税理士さんに任せるとかはまだ早い気がするし…

↑こんなふうに考えながら、

コツコツ作業されている方も多いかもしれませんね。

ただ、今後もずっと事業や副業を続けていかれる予定の方であれば、

少しでも早く税理士に税金計算を依頼した方が良いですよ。

なぜかというと、事業を始めてからだいたい3年以内のタイミングで、

税務署から税務調査がやってくる可能性が高いからです。

(特に「利益が出ている新しい企業」は集中的に狙われます)

注意してほしいのは、

税務調査って「過去の年度にさかのぼってチェックしてくる」ことです。

事業や副業を始めて1年目〜3年目って、

事業者側も会計に慣れていなくて、

計算まちがいが生じていることって多いんですよね。

税務署は、私たち事業者側のそういう「弱いところ」をついてきます。

もし税務調査が入って計算のまちがいを指摘されると、

延滞税や加算税などばく大な金額のペナルティが課せられる可能性があります。

こういったリスクを避けるためにも、

「事業や副業を始めた最初の年度」から、

税理士に確定申告を依頼しておいた方が良いんです。

>>税理士費用の相場がいくらぐらいか?を知りたい人へ

うちには税理士なんてまだ早い…(←これ、危険すぎです)

(自力で税金計算!…は実は「超危険」です)

うちみたいな小さな規模のところには、

税理士なんてまだまだ早い…

↑ここまで読まれて、こんなふうに感じたかもしれません。

私も自営業長いことやってますので気持ちはわかります。

「税理士に依頼」とか、なんとなくハードルが高いですよね。

ですが、小さい規模の事業者ほど、

事業スタートした最初の年」から税理士に見てもらう方が良いのはまちがいないです。

(すでに経験豊富な経理スタッフを従業員として雇っているとかなら別ですが)

なぜかというと、

あまり知識がない状態で、自力で税金計算するのってあまりにもリスクがでかすぎるんですね。

税金の計算をいい加減にやってしまうと、下手すると会社がつぶれます。

(これは誇張ではなく、リアルな話です)

実際、私は過去に300名以上の自営業者さんや

副業サラリーマンの方たちとやりとりをしてきていますが、

事業を始めてまもないころに、

勘違いしてやってしまった会計処理のミスが原因で、

数十万円〜100万円以上の追徴課税(延滞税や加算税のこと)

を課せられてしまった人たちをたくさんみてきました。

税金は期限までに「現金で」払わないといけないのにも要注意です。

利益が出ていても、入金がかなり先で税金の納付期限にまにあわない…ってあるあるですからね。

ほんのわずかな税理士に支払うコストを節約したのが原因で、

何年後かにいきなり税務調査がきて、

ウン十万円、ときにはウン百万円もの追徴課税をとられる…。

なんて、馬鹿馬鹿しすぎますよね。

(最近はYouTuberとかでもそういう人増えてるみたいですが)

すでに事業や副業をスタートしている人なら、

少しでも早いタイミングで税理士に依頼しておく方が絶対に良いですよ。

>>自社の近所で「最安値の税理士事務所」を知る方法

「100万円以上も税金が安くなった…!」なんてケースもあります

(節税対策や補助金活用で100万円以上のお金が返ってくることもあります)

 

税理士は、自営業者や副業の人向けの節税対策や、

使える補助金などの活用方法を教えてくれます。

利益がかなり出ている年に適切な節税対策ができれば、

「100万円以上も税金が安くなった…!」

なんてことも普通にありますよ。

創業後1〜3年以内の自営業者だけが使える補助金とかもありますからね。

(※ 補助金=申請すれば政府からタダでもらえるお金のこと。これは期間限定なことが多いので、絶対に検討しておいた方が良いです)

節税対策や補助金を上手に活用できれば、

税理士に支払うコストぐらいは普通にペイできてしまったりします。

あと、経理のレシート整理とかってめちゃくちゃめんどくさいですよね…。

税理士に依頼すれば、こういう作業は全部変わりにやってもらえるのも大きいです。

毎日コツコツ領収書整理して、自力で確定申告…なんて早めに卒業しましょう。

これって経営者がやるべき仕事じゃないですから。

こういう「めんどうな割に1円も生み出さない作業」は税理士に丸投げして、

私たち事業者は売上を少しでも増やすことに集中しましょう。

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税理士って、地域によって料金相場がまったく違うので注意してください。

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