
- 給与支払報告書を役所に提出しない罰則がある?
- パートさんから「できれば提出しないで下さい」と頼まれたけどどうすべき?
- 提出しない場合、会社や従業員にどんなリスクがあるの?
従業員を雇っている事業者の方にとって、
毎年年末調整の時期になると頭の痛い問題ですよね。
だんなさんの扶養の範囲内で働きたいパートさんなどを雇っている場合、
「できれば役所に給与支払報告書は出さないでください…」とお願いされるケースも多いかと思います。
この記事では給与支払報告書を提出する/しないのルールや、提出をしない場合にどのようなリスクがあるのか?について説明します。
ぜひ参考にしてみてください。

税理士事務所で11年間働いた後、一般企業の経理に転職してグループ会社3社の経理管理職をやっています(社長の確定申告などプライベートなことまでこっそりやってたりします)会計税務の他にも助成金活用や社会保険関連のリスク管理業務も得意。経営者むけの節税対策専門ライターとしても活動しています。
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給与支払報告書の提出をしないと罰則があるの?

給与支払報告書とは、従業員の住民税を市町村が計算するために必要な書類です。
事業者は雇用形態にかかわらず、全ての従業員の給与支払報告書を用意しなければなりません。
もし、給与支払報告書の提出義務があるのにしなかった場合、以下のような刑事罰を受ける可能性があります。
1年以下の懲役または50万円以下の罰金
↓根拠となる法律の条文としてはこちらです。
市区町村への給与支払報告書の提出が義務付けられているにも関わらず、提出しなかった場合や虚偽の報告をした場合は、地方税法第317条の7の規定により1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
〜提出すべき給与支払報告書、届出書若しくは公的年金等支払報告書を提出しなかつた者又は虚偽の記載をした給与支払報告書、届出書若しくは公的年金等支払報告書を提出した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
実際にはこうした刑事罰が課されるケースはまれです。
ただ、税務調査などによって給与支払報告書の提出漏れが発覚した場合、従業員が負担すべき住民税等を事業者側が負担させられてしまうようなケースが考えられます。
(実際にはこちらの方が痛いです)
給与支払報告書を提出しない場合、このような厳しいペナルティがあるんですね。
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給与支払報告書について4つの疑問

↓給与支払報告書についてよくある疑問として、以下の4つが考えられます。
- 給与支払報告書の提出義務があるのって具体的にどういう事業者?
- 給与支払報告書の提出義務がない「30万以下の特例」とは?
- 給与支払報告書を提出していないのが役所にバレるってどんなケース?
- 給与支払報告書の提出期限は?
それぞれの項目について、順番にみていきましょう。
1. 給与支払報告書の提出義務があるのって具体的にどういう事業者?
給与支払報告書の提出義務がある従業員は正社員だけでなく、アルバイト・パート・役員も含まれます。
給与支払報告書の提出義務がある場合の例を、4つ記載したので参考にしてください。
- 在職中のアルバイト(前年の年収30万超)
原則通り提出義務がある - 在職中の正社員(前年の年収30万超)
原則通り提出義務がある - 前年退職したアルバイト(前年の年収30万以下)
免除の特例があるが、可能な限り提出 - 前年退職した正社員(前年の年収30万以下)
免除の特例があるが、可能な限り提出
2. 給与支払報告書の提出義務がない「30万以下の特例」とは?
提出義務には特例があり、前年中に退職した人のうち支払額が30万以下の場合は提出の免除が認められています。
この特例は、入社後すぐに従業員が退職してしまったときなど、給与支払報告書の提出に必要な個人情報が不足している人を想定しています
あくまで特例による免除であり、全ての市区町村にあてはまるわけではありません。
「30万以下の給与で毎年退職を繰り返せば住民税・国民健康保険料がお得になるのかな?」
と考える人も出てきてしまうので、公平の観点から30万円以下の退職者についても提出するよう推奨されています。
もし、この特例に当てはまった場合は、事前に市区町村へ確認したうえで特例を利用するようにしましょう。
3. 給与支払報告書を提出していないのが役所にバレるってどんなケース?
市区町村の役所は、給与支払報告書が未提出であることを容易に判断できます。
従業員が個人で確定申告すると、市区町村に給与支払報告書に提出していないことがばれます。
副業をしている従業員は年末調整とは別に確定申告をしますよね。
従業員が税務署へ提出したマイナンバーや収入等の情報は、そのまま市区町村へ回送されます。
4. 給与支払報告書の提出期限は?
給与支払報告書は、前年中に支払った給与の情報を従業員が住んでいる市区町村へ翌年の1月31日までに提出します。
提出期限に遅れると、翌年6月の徴収開始に間に合わない可能性があります。
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給与支払報告書を提出しなかったときの従業員への影響

事業主にとって、もっとも怖いことは大切な従業員の生活に不利益が生じてしまうことです。
給与支払報告書を提出しなかった場合どのような影響が出るのか4つ解説していきます。
- 脱税になる可能性がある
- 社会保険の扶養に入れない
- 認可保育園の利用料や、児童手当が計算されない
- 国民健康保険料が計算されない
脱税になる可能性がある
従業員が自分の課税証明書や住民税決定通知書を見たときに、記載された収入金額が少ない
とわかると、事業主が給与支払報告書を提出しなかったことに気付くでしょう。
本来は住民税が課税される収入金額の場合、従業員が脱税をしたと判断される可能性があります。
社会保険の扶養に入れない
夫(家族)の社会保険の扶養に入る際に、前年の収入を確認する目的で「非課税証明書」を求められることがあります。
「非課税証明書」は、市区町村が収入の情報を把握していることが大前提です。
給与支払報告書を提出しないと、市区町村が収入の情報を把握できずに「非課税証明書」を発行できないので、社会保険の扶養に入れなくなってしまいます。
住民税の計算をした結果、課税・非課税を判定できるものなので、市区町村が収入の情報を把握していない「未申告」の状態とは違います。
認可保育園の利用料や、児童手当が計算されない
幼児教育・保育の無償化制度が始まりましたが、0歳〜2歳児の保育料については住民税の金額をもとに計算されます。
児童手当の計算方法は住民税の金額が重要です。
そのため、給与支払報告書を提出しないと、正確な住民税がわからず従業員とトラブルになってしまいます。
国民健康保険料が計算されない
国民健康保険料は、市区町村が従業員の収入の情報を把握して計算します。
そのため、給与支払報告書の提出をしないと、市役所が収入を把握できず従業員が国民健康保険料を正しく納められません。
また、国民健康保険の減額や免除の申請をする際には「非課税証明書」を求められます。
このときにも従業員の収入の情報を把握しておかなければならないので、申請が上手く受理されない可能性があることも覚えておきましょう。
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