役員貸付金の消し方5つ!税務上のデメリットが少ない返済方法を解説(開業税理士が執筆)

役員貸付金,消し方
役員貸付金は早めに対処しよう
  • 役員貸付金が発生。消し方が知りたい…
  • 税務上デメリットが少ない返済方法は?
  • 役員貸付金が増えるとどうなる?

役員貸付金は、会社側が役員側へ貸しているお金のことです。

役員貸付金が多いと金融機関からの信用が下がり、融資が受けられなくなる可能性があります。

見つけ次第、早めに対処することが大切です。

この記事では経理経験20年の筆者が、役員貸付金の消し方を6つご紹介していきます。

役員貸付金をどのように処理すればいいか迷っている方は参考にしてください。

【この記事を書いた人】文章を書くのが三度の飯より好きな40代前半の税理士ライターです。会計や税務について様々なメディアに寄稿しています。上場企業経理として10年勤務(税理士資格取得)後、税理士・執筆業として独立開業しました。税理士としては常時15社の顧客企業の税務を担当しています。

役員貸付金を消す6つの方法

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処理の仕方はさまざま

役員報酬との相殺

役員貸付金を消す際に一般的なのが、役員報酬を増やすことです。

役員給与を増やし、増加した分は貸付金の返済として戻してもらいます。

相殺の仕方は、返済に必要な金額を役員報酬に加算したあと、所得税や社会保険料を除いた振込額を算出します。

振込額から返済額を引いた金額を受け取れば返済完了です。

しかし一番手軽でオーソドックスな役員報酬での返済には、2つの注意点があります。

注意点1:役員個人の所得税・社会保険料・住民税の負担が増す

役員報酬の増額に比例して増えていく所得税・住民税を役員自らが負担することになります。

なお、社会保険料のみ上限額があります。

増額前の役員報酬が下記の金額以上であればすでに上限に達しているため、

そこまで気にする必要はないでしょう。

  • 健康保険料の上限額:1,355,000円
  • 厚生年金保険料の上限額:635,000円

出典:全国健康保険協会_令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

注意点2:役員報酬は決算後の年1回しか変更できない

役員報酬を変更できるのは、決算後の年1回だけです。

これを定期同額給与といい、期初に決めた役員報酬は期中に変更できない決まりがあります。

状況に応じて気軽に変えられないので、増額する際は慎重に決めましょう。

また、あまりに額が多いと税務署から指摘が入ることがあります。

額が多い場合は一度に処理せず、何年かに分けて処理しましょう。

役員賞与との相殺

まず、役員に対する賞与は基本的に損金算入できません。

ただし以下の条件をクリアすれば損金として認められます。

  • 事前に税務署に対して「事前確定届出給与」を申請する
  • その後、届出内容の時期や回数、金額を完全に一致させて支給する

事前確定届出給与は、税務署に役員賞与支給額を事前に届け出て損金算入を認めてもらう制度です。

この届出を忘れたり、届出内容が一部でも不一致だと役員賞与は損金算入できません。

無駄に税金を納めることになりますので十分に気をつけましょう。

出典:国税庁 事前確定届け出給与に関する届け出

また、役員賞与で相殺できたとしても、役員個人の所得税や社会保険料などはかかります。

さらに役員報酬と同じで利益などに照らして金額が多すぎると税務署に指摘され、

否認される可能性もあるので注意が必要です。

役員の個人資産を会社に売却する

役員個人の資産を会社に売却することで、貸付金と相殺します。

しかし売却することで個人には譲渡所得税が課せられます。

また売却する資産価格は本当に適正か判断したり、

売却するときの税金(所得税・住民税・登録免許税など)も考慮する必要があります。

役員退職金との相殺による返済

ちょうど役員が退任するタイミングであれば、退職金の一部を相殺して清算することもできます。

しかし既に退職していた時や退職時期が未定の場合は相殺できないので注意が必要です。

退職金には社会保険料はかかりませんが、基本的に所得税と住民税が発生します。

ただし在任期間に応じて控除されるため、期間が長いほど控除額が大きくなる仕組みです。

仮に20年役員として在任した場合の控除額は800万円となり、

借入金の残高がこの金額以下であれば、所得税と住民税は発生しません。

また退職金の相殺もあまりに金額が過大になると、税務署に否認される可能性があります。

役員が所有している自己株式の取得

会社に剰余金が多額にある場合は、役員が持っている会社の株式を会社が買い取って返済する場合もあります。

自己株式取得のデメリットは「みなし配当金」です。

自己株式を買い取った場合、会社は資本金を減少させる処理をします。

この時の減少額に対して買取額が大きかった場合、

それが「みなし配当金」としてみなし配当金税が課税されます。

自己株式の取得は買取価格によってさまざまな課税問題が発生します。

思わぬところで税金を支払うことになる可能性もあるため、

顧問税理士に相談のうえ、慎重に進める必要があります。

【非推奨】 貸し倒れ処理(会社側の債務免除)

役員からの貸付金が回収できない場合、会社が免除する方法もあります。

この場合は貸し倒れ処理をすることになりますが、

この損失は、税金計算上は役員賞与扱いになり、損金処理はできません。

会社は法人税の税負担が生じ、役員個人には免除を受けた金額に対して所得税や住民税が課せられます。

双方にとってデメリットしかないため、貸し倒れ処理はなるべく避けたほうが良いでしょう。

>>自営業者は、いつのタイミングで税理士に相談すべき?

役員貸付金が多い場合のデメリットは?

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デメリットも知ることも大切

銀行の融資審査で不利になる

金融機関は融資の審査で、返済能力のほかに資金用途も注視しています。

資金用途が明確でないとお金を貸してくれません。

資金用途は、通常は運転資金や設備投資の目的であれば、何ら問題はありません。

しかし役員貸付金が残っているのに融資の申し込みをすると、

貸付金を役員が私用で使っているのではないか?と疑われる可能性があります。

最悪の場合は融資を受けられないこともありますので、

役員貸付金は放置せず、定期的に返済するなど対策することをおすすめします。

利息をかける必要がある

役員貸付金は、税務上では利息をつけていれば特に問題視されることはありません。

しかし無利息はNGです。

金利をつけないと役員に贈与していると認定される可能性があります。

この場合、役員賞与扱いになるため、注意が必要です。

貸付金に対する相続税

役員にもしものことがあった場合、役員貸付金は負の遺産として遺族に相続されます。

役員=株主の場合、会社のお金を自分のものだと勘違いしている役員を多く見かけますが、

会社と役員の間に生じたお金の貸し借りは簡単にはなかったことにはできません。

もしもの時は多額の負債や相続税を遺族に負担させてしまう可能性があるのです。

>>自営業者は、いつのタイミングで税理士に相談すべき?

役員貸付金はなるべく早く処理しよう

役員貸付金,消し方
役員貸付金はなるべく早く処理しよう

役員貸付金は、金融機関からの信用がなくなり融資を受けられなくなる原因にもなります。

この記事では相殺の方法として6通りの消し方をご紹介しましたが、

発生したケースによって適切な処理方法は変わります。

会社だけでなく、役員個人の税金にも関わってくることなので、

税理士などに相談するのも1つの手段です。

自営業者は、いつのタイミングで税理士に相談すべき?

 

このブログ記事を読んでいただいている方の多くは、

「なんらかの理由で、会計や税金の計算をなんとかしないといけない」

という状況の方が多いかと思います。

  • まずは自力でなんとかしよう…
  • とりあえず、今年は自分で確定申告やをってみよう。
  • 税理士さんに任せるとかはまだ早い気がするし…

↑こんなふうに考えながら、

コツコツ作業されている方も多いかもしれませんね。

ただ、今後もずっと事業や副業を続けていかれる予定の方であれば、

少しでも早く税理士に税金計算を依頼した方が良いですよ。

なぜかというと、事業を始めてからだいたい3年以内のタイミングで、

税務署から税務調査がやってくる可能性が高いからです。

(特に「利益が出ている新しい企業」は集中的に狙われます)

注意してほしいのは、

税務調査って「過去の年度にさかのぼってチェックしてくる」ことです。

事業や副業を始めて1年目〜3年目って、

事業者側も会計に慣れていなくて、

計算まちがいが生じていることって多いんですよね。

税務署は、私たち事業者側のそういう「弱いところ」をついてきます。

もし税務調査が入って計算のまちがいを指摘されると、

延滞税や加算税などばく大な金額のペナルティが課せられる可能性があります。

こういったリスクを避けるためにも、

「事業や副業を始めた最初の年度」から、

税理士に確定申告を依頼しておいた方が良いんです。

>>税理士費用の相場がいくらぐらいか?を知りたい人へ

うちには税理士なんてまだ早い…(←これ、危険すぎです)

(自力で税金計算!…は実は「超危険」です)

うちみたいな小さな規模のところには、

税理士なんてまだまだ早い…

↑ここまで読まれて、こんなふうに感じたかもしれません。

私も自営業長いことやってますので気持ちはわかります。

「税理士に依頼」とか、なんとなくハードルが高いですよね。

ですが、小さい規模の事業者ほど、

事業スタートした最初の年」から税理士に見てもらう方が良いのはまちがいないです。

(すでに経験豊富な経理スタッフを従業員として雇っているとかなら別ですが)

なぜかというと、

あまり知識がない状態で、自力で税金計算するのってあまりにもリスクがでかすぎるんですね。

税金の計算をいい加減にやってしまうと、下手すると会社がつぶれます。

(これは誇張ではなく、リアルな話です)

実際、私は過去に300名以上の自営業者さんや

副業サラリーマンの方たちとやりとりをしてきていますが、

事業を始めてまもないころに、

勘違いしてやってしまった会計処理のミスが原因で、

数十万円〜100万円以上の追徴課税(延滞税や加算税のこと)

を課せられてしまった人たちをたくさんみてきました。

税金は期限までに「現金で」払わないといけないのにも要注意です。

利益が出ていても、入金がかなり先で税金の納付期限にまにあわない…ってあるあるですからね。

ほんのわずかな税理士に支払うコストを節約したのが原因で、

何年後かにいきなり税務調査がきて、

ウン十万円、ときにはウン百万円もの追徴課税をとられる…。

なんて、馬鹿馬鹿しすぎますよね。

(最近はYouTuberとかでもそういう人増えてるみたいですが)

すでに事業や副業をスタートしている人なら、

少しでも早いタイミングで税理士に依頼しておく方が絶対に良いですよ。

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「100万円以上も税金が安くなった…!」なんてケースもあります

(節税対策や補助金活用で100万円以上のお金が返ってくることもあります)

 

税理士は、自営業者や副業の人向けの節税対策や、

使える補助金などの活用方法を教えてくれます。

利益がかなり出ている年に適切な節税対策ができれば、

「100万円以上も税金が安くなった…!」

なんてことも普通にありますよ。

創業後1〜3年以内の自営業者だけが使える補助金とかもありますからね。

(※ 補助金=申請すれば政府からタダでもらえるお金のこと。これは期間限定なことが多いので、絶対に検討しておいた方が良いです)

節税対策や補助金を上手に活用できれば、

税理士に支払うコストぐらいは普通にペイできてしまったりします。

あと、経理のレシート整理とかってめちゃくちゃめんどくさいですよね…。

税理士に依頼すれば、こういう作業は全部変わりにやってもらえるのも大きいです。

毎日コツコツ領収書整理して、自力で確定申告…なんて早めに卒業しましょう。

これって経営者がやるべき仕事じゃないですから。

こういう「めんどうな割に1円も生み出さない作業」は税理士に丸投げして、

私たち事業者は売上を少しでも増やすことに集中しましょう。

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